• 今崎憲児さん

    今崎さん

    グーグルのカークランドオフィスで、アンドロイドのテストエンジニアとしてキャリアを積む一方、シアトルITジャパニーズ・プロフェッショナルズ(SIJP)の活動を通し、シアトルのコミュニティビルダーとしてITを通じたネットワークの形成を志す、今崎憲児さんのストーリー。

    ※これまで、Story of My Lifeでは、SIJPのメンバーの方々にインタビューをさせて頂きました。今崎憲児さんのストーリーと合わせて、ぜひお読みください。

    竜盛博さんのストーリー:http://story-of-mylife.com/竜-盛博さん/
    橋本幸司さんのストーリー:http://story-of-mylife.com/橋本幸司さん/
    Gravning里穂さんのストーリー:http://story-of-mylife.com/gravning里穂さん/

    グーグル:https://www.google.com/intl/ja/about/
    シアトルITジャパニーズ・プロフェッショナルズ(SIJP): http://sijp.org

    インタビュー:2014年10月、12月     記事:南 裕基子
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    ITを通じて夢の実現に貢献したい

    シアトルには世界でも有名なIT企業が数多く存在しているが、これまで日本人同士が繋がる機会がなかったため、2010年にSIJPを設立した。ITに携わる者は
    もちろん、ITに興味のある人々が交わる一大コミュニティを築き、IT業界で働く人向けの勉強会だけでなく、一般の人々も気軽にITに親しめるような講演会など、幅広い活動を行っている。例えば、直近では子供向けにプログラミング講座を開いた。次回開催を希望する声があがるほどの盛況であったが、参加者やボランティアの学生達にプログラミングの面白さに触れてもらう機会となったことが、何より嬉しかった。

    1月24日(土)には『新年おめでとう茶ッカソン in Seattle』を開催する。『茶ッカソン』とは、元々IT業界を中心に世界中で行われている、ハッカソンというイベントからヒントを得ている。ハッカソンとは、プログラマーを中心とした人々がチームを組み、意見交換やプログラミングを通じて、短期間でひとつのサービスを作り上げ、競い合う試みである。そこに、“お茶”が加わったのが茶ッカソンだ。よりカジュアルな雰囲気の中、多様なバックグラウンドを持つ人々がチームを組み、共通の議題に取り組む。普段交わらない者同士が密なコミュニケーションを取るからこそ、イノベーションが生まれるのではないかと期待してしまう。当日は、正月にちなんで餅つきを行うので、ぜひ多くの人に記念すべき第1回のイベントに参加してほしい。(参加お申込はこちらから)

    現在はボランティアのみの多くの方々に支えられ、いよいよNPO法人として活動をスタートしよう、という所まで来ている。私の役割は、ITを活用したネットワークをシアトルの地に創り出す、コミュニティ ビルダー。活動を通じて新たな出会いや学びの機会を提供し、夢を持つ人、そして夢に向かって努力している人々を応援したい。グーグルのミッション(*世界中の情報を整理し、世界中の人々がアクセスできて使えるようにすること)にも通ずるが、あらゆる人がどんな情報でも平等にアクセスできる環境を構築し、ITの力で社会に貢献していることは、公私ともに目指している所である。

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    技術の最先端、グーグルでエンジニアとして働くとは

    アマゾンで6年間働いた後、周囲から魅力的な会社であると噂されていたグーグルの採用試験を受けてみた。グーグルの採用試験は非常に難しいことで知られており、実際に私も一回目の面接では不合格となってしまう。幸運なことに、2回目の挑戦で入社を許されたが、自分がどうやって入社できたか、今でも正直よく分からない。

    2010年にグーグルへ入社して以来、一貫してソフトウェアのテストエンジニアとしてのキャリアを積み、主にソフトウェアの品質管理の仕事を担ってきた。
    例えば、ソフトウェアを検査するためのプログラムを書き、ソフトウェアのバグ(不具合)を検証する。商品のリリースが控える中、スピードと品質管理のバランスが問われる重要な仕事だ。テストエンジニアとして、グーグルクローム(ブラウザ)のビデオ部門、GoogleのクラウドのGoogle Compute Engine部門を経て、先日(2014年11月)、兼ねてより希望していた携帯端末分野への異動が叶い、アンドロイド(OS)のアプリケーションの一つであるメッセンジャーを担当するチームに移った。携帯電話の種類や数自体が年々爆発的に増え続けている中、アプリケーション関連のテストは、やりがいのある新たな挑戦だ。一つの例を挙げると、視覚障害などハンディキャップを持つ人にも使って貰えるソフトウェアを作り上げる、という使命がある。グーグルが誰もが世界中の情報にアクセスできることを掲げているが、そのとてつもない使命を全うすべく挑戦することは、何にも変えがたい。

    グーグルという会社について少し紹介すると、社員が仕事以外のことは心配せず、100%の状態で取り組めるような環境があり、また、最新技術を駆使してエンジニアが効率的に業務を進められるよう様々な計らいがなされている。例えば、ビュッフェスタイルで食事が無料のカフェテリア、シャワー完備のスポーツジム、ゲームなど遊戯場が設置されている。また、かなり前から会議でテレビ電話システムを使って世界中の社員と顔を合わせて会議ができるようにしたり、離れたオフィスにいる者同士が会議を行う際に、使用されていない最適な会議室を自動的に探し出し、先に確保しておけるツールなど、どれも驚くべき技術ばかりだ。一緒に働く社員の質にも驚かされる。採用のプロセスがしっかりしているお陰であると思うが、1を聞けば10を理解する天才と呼べる人物ばかりで、上司は部下のマネジメントと技術的な実務をきっちりと両立する、尊敬できる人物がたくさんいる。問題があれば居てもたってもいられず解決策を探すような人が多いのも特徴だ。

    海外大学院での苦闘、そしてアマゾン入社へ

    日本の大学でコンピューターサイエンスの修士号を取得した後、博士課程1年目に担当教授へ交換留学の希望を出した。尊敬していたアメリカ元大統領ジョン・F・ケネディの思い出の地を巡るべく、1ヵ月間アメリカ中を一人で見て回わったことがあったが、その初めての海外旅行で感じた人の暖かさに魅了され、いつかは海外留学をしたいと思っていた。これまで大学の先輩達は、交換留学で海外に行くのが慣例となっており、自分が海外に留学するのも必然であったのかもしれない。カナダにあるマギル大学に通い始めると、自由度の高さや人々のフランクさ、といった点で自分の水に合うのではないか、と渡航前から薄々気づいてはいたが、その思いは確信へと変わる。語学力や金銭面など重要な問題が山積みだったが、これだ!と思ったら、迷わず突き進むべき。様々な不安をよそに日本の大学院へ復学せず、カナダに残る決意をした。

    マギル大学があるケベック州では、第一言語がフランス語であるため、英語中心のマギル大学で補助金を得ることは難しい。幸いにも、同じ分野の研究をしている知人の伝でオタワのカールトン大学博士課程へ入学することができた。入学当初から、カナダでの生活を満喫し過ぎたことが原因で、PhD博士課程卒業までの7年間、語学にも研究活動にも苦しんだのは自業自得かもしれない。在学中に何度も辞めようと思ったが、その度に、同じく苦闘を経験してきた先輩から「辞めることは止めておけ」とアドバイスをもらったお陰で、卒業までやり遂げることが出来た。当時は、なんて無駄な苦労だったのだろう、と思っていたことが、実は現在の自分に活きていたりする。苦労するとわかった瞬間、すぐに諦めてしまうのではなく、まずは何事も挑戦してみることだ。一生懸命取り組んでいる時には、どれが無駄な苦労なのかなんて誰にも分からない。将来、どこかできっと役に立つ時が来るはずである。

    博士号を取得した後、大学教授を目指すのではなく、コンピューターサイエンスで身につけたスキルを活かしながら、エンジニアとして活躍する道を志した。たまたま幸運にもアマゾンがカナダで採用活動を行っていた縁で、面接を受ける機会を頂き、入社することになる。面接官が大学院の研究内容に興味を持ってくれ、また、波長が合ったことで話が進んだのが決めてとなったのだろう。

    在籍していた6年間は、ウェブサイトに携わる実務から多くのことを学んだ貴重な時間だった。一方で、一生忘れられないような苦い失敗もしてしまったこともある。私の誤った操作が原因で、世界中のアマゾンのウェブサイト上で一部の情報が30分ほど消滅する事態を引き起こしてしまい、体内の血が逆流するくらい青ざめた。業務上で起こった不名誉な事例として社内に共有されたほどのひどい失敗だったが、こんな思いは二度としたくない、と強く思いながら、今に
    反省を生かしている。

    何か一つ、他の人よりも秀でること

    ここまで私の大学時代から現在までをお話したが、そこに至るまでのお話もしたい。兵庫県神戸市に生まれ、小学校5年生の時に親の仕事の関係で熊本県へ引っ越すことになった。方言が全く分からない転入生は必然的にいじめの対象とされ、当初は毎日辛い日々を過ごす羽目になる。しかし、どうすればこのいじめを止めさせられるか悩み抜いた結果、何でもいいから人より秀でるものが自分にあれば、できない奴としていじめられなくなるのではないか、そう考えた私は、所属していたサッカークラブではいつも補欠であったものの、その代わりに勉強を人一倍必死で頑張った。そして、その努力が報われ勉強が出来るようになってくるにつれ、いじめは次第に減っていった。サッカークラブのコーチから「こいつは補欠だけど、勉強が出来るのだから、見習いなさい」と言われるほどになった。

    小学校で勉強が得意になった私は、中学生になりコンピューターゲーム好きの兄の影響でコンピューターに興味を持ち始めた。両親が兄に買い与えたコンピューターが自宅にあったお陰で、普段はゲームセンターでしかお目にかかれないゲームを自宅で目にすることができる環境にいた。ゲームを楽しみたい一心で、兄と一緒にコンピューターにマシンコードを必死に打ち込んでいた記憶がある。自分が打ち込んだコードがゲームの中でどう動くのか、この好奇心が後にコンピューターサイエンスを専攻するきっかけに繋がっていった。

    勉強で一目置かれた経験は、子供ながらに処世術として学んだことである。これだけは誰にも負けない、そう誇れるものがあれば、何か悪い部分があってもカバーできる。私の場合は、それが勉強だった。何か一つでも、自分の中に得意なこと・好きなことを見つけ、とことん努力していけば、それはやがて他人よりも秀でた強みに変えることができるのだと思う。

    フラストレーションを原動力に変える

    皆さんの中にも、やりたいことが上手くできない現状にイライラしてしまう経験があるのではないだろうか。このような状況で、現状に満足せずに改善しようとする力は大切にすべきである。グーグルに入社し希望する仕事に就いている今でも、フラストレーションが溜まることは多々あるが、それは決して悪いことではない。むしろ、現状を変えようとする原動力になり、良いことだと考えている。例えば、行き詰ってしまった作業に対し、生産性を上げる努力が足りないのではないか、と自身に問いかけてみる。すると、時間を無駄にせずに効率的に仕事を進められるか考える契機となり、結果として次の仕事に大いに役立っている。目まぐるしく変化するITの世界で最新技術に携わる者として、学び続ける大変さを感じるが、ITの進化が、何か新しいことを学び、新しい何かを始めるチャンスをもたらしてくれている。『スクラッチ』といったウェブサービスやクラウドを利用すれば、小学生でもゲーム感覚でプログラミングを学べる。また、『教養としてのプログラミング講座』など、プログラミングを学んだことのない人向けの入門書も続々と発刊されており、もしコンピューターサイエンスの世界に触れたことのない人がいたら、現状に満足せず、ぜひ新しい学びにチャレンジしてほしい。

    最後に、学生へ送る言葉として、人との出会いや縁を大切にしてほしいと伝えたい。振り返ると、日本・海外を問わず、幼少期、学生時代、そしてSIJPの活動を通じて色んな人と出会い、助けてもらったお陰で今の自分がある。もしあなたがやりたいことを持っているのならば、どんどん周りの人に伝えてみてほしい。SNSで自分の決意を発信することだけでも自分に改めて決意を言い聞かせることができる。また、会いたいと思っている憧れの人にダメ元でSNSでメッセージを送ることもできる。誰しもが何らかのやりたいことやアイデアをもっており、周りの人の夢を手助けすれば、いつか自分の番が回ってきた時に助けて貰える。人の幸せは回りまわって自分に返ってくるものだ。人との出会いを大切に、夢の実現へ歩んでいって欲しい。